日常生活の中で「自分のお気に入りの物を使う時に、幸せを感じる」そう思ったことはありませんか?
今回は、職人の手仕事により作り出された美しい生活道具を取り扱うお店「夏椿」さんを紹介させていただきます。
小道に揺れている真っ白な暖簾
鎌倉駅から銭洗弁天様の方へ、観光地の喧騒から少しずつ離れるように歩きながら徒歩15分。トンネルを越え緩やかな坂道を上がった先、そこに夏椿があります。
店主の恵藤さんがセレクトした作家ものの器や暮らしの道具、服が並んでいます。
暖簾をくぐると、誘うように玄関が空いていました。そこから見える美しい白い壺の存在感に少し緊張しながら入ると、ふっと肩の力が抜けるような落ち着く空間が広がっていました。
ゆったりとした空間に流れるゆるやかな時間
室内は、器を中心にガラス、陶器、木、布などさまざまな素材のものが、3部屋に渡って置かれています。
そのカテゴライズされているようでされていない自由な様子に、不思議とモノたちものびのびとしているように見えました。
入ってまず、目に入るのが大きなテーブルに生けられた華やかなお花。
そして、縁側の向こうに広がる緑豊かなお庭です。
奥には一転和風の畳の部屋があります。畳とちゃぶ台と縁側の組み合わせに思わず微笑んでしまいます。
中央の部屋左手側にはレジの置かれた部屋があります。ガラスケースの中には使い勝手の良さそうな革小物、真鍮のリングやピアスなどのアクセサリーが並んでいます。
「質の良く長く使えて、ずっと見ていても飽きのこないもの」
この見出しの言葉は、店主の恵藤さんが考える、良いモノの一つの定義だそうです。確かにそこに置いてあるものはただ美しいだけではない、使い勝手の良いだけではなく使うことで魅力を増していきそうな物が、集まっていました。
こちらは陶芸家伊藤環さんの、淡く枯れゆく錆びたブリキのような質感の枯淡釉ボウル。
やわらかな色合いと質感の天然染めのお洋服。
恵藤さんが作家さんと一緒に創ったという陶器のティッシュケース。
革、木という過程を経て、陶器という素材に行き着いたそうです。
自然な歪みも愛おしい、人気木工作家の須田二朗さんのウッドボウル
切り立った谷戸の前に広がるお庭。蚊取り線香の香りに夏を感じる
「お庭がいいですね」
縁側に浮かぶ様に生けられたドクダミの花を見て思わず呟いた私の言葉に、恵藤さんは、「自然と人とが混じったような背景だと、物が映えるような気がします」と微笑みながら答えてくださいました。
季節のお花が生けられた空間に、恵藤さんの季節の移ろいや自然を大切に思う気持ちが伝わってきました。そして、使うことによって引き出されている道具の魅力にハッとします。こんな風に使うこともできるのだなと、私の家に置きたくなりました。
都会でもあり田舎でもある、緑のあふれる鎌倉の魅力を味わえるお店だと思いました。
大切にしたいのは「作家の思いを買い手に伝えること」
クラフトフェアなどでいいと思った作家さんのものをセレクトしているという恵藤さん。写真で確認するだけでなく、実際に自分の目で見て、触れて、そして何より作家さんとの対話を通してそのものが生まれたストーリーやものの魅力を紐解いた上で扱うかどうか決めるそうです。
お客さんが品物を見ている時に程よい距離感で、そのものの魅力や作家さんのことについてひとつひとつ丁寧に説明してくださる恵藤さんの姿が印象的でした。
自分が良いと思ったモノをどんな人がどんな想いで創っているのかを伝えてもらうことができるのは、ギャラリーならではの楽しみ方だと思います。
「夏椿」店名につけた店主の想い
朝咲き、夕には散っていく“夏椿“の潔さに惹かれて、店名をつけたという恵藤さん。
お店は戦前築の家でゆったりと息づいた空間ですが、モダンでどこかパリッとした非日常感はそんな夏椿の潔さを思い起こさせます。
また随時、企画展が催されているようなのでHPも要チェックです。
商品の注文などもHPからできるようです。
常に同じ道具が置いてあるわけでないというのも、魅力の一つです。
質感や重さ、ひとつひとつ手仕事で作られたものならではの表情の違い。
それは写真ではお伝えしきれません。
みなさんもぜひ自らの目で見て、手で感じて、道具との一期一会の出会いを楽しんでみてくださいね!
夏椿
住所:神奈川県鎌倉市佐助2-13-15
アクセス:JR横須賀線鎌倉駅から徒歩15分
TEL:0467-84-8632
営業時間:11:00-17:00
定休日:月曜日・火曜日(祝日の場合営業、振替休日有り)