逗子駅から海岸に出るには、逗子郵便局近くの細い通りに入ります。
車がすれ違うにも譲り合いが必要なのに、海水浴シーズンになると人であふれる通り。
その道を海岸に向かって歩くと、砂浜まであと100Mほどの場所にカフェがありました。
『umibe café』「うみべかふぇ…」。
海には近いけど、海に面しているわけではないこのカフェ。なぜか惹かれます。
3年前に逗子のシェアハウスでの2拠点生活を始めてから、ずっと気になっていたのに開くことがなかった海を感じる白い扉。
気づいたら、その扉を開いていました。
木の温かさを感じるやわらかな店内
一歩店内に足を踏み入れると、木がふんだんに使われた店内。そこにはJAZZが流れていました。
「お好きな席にどうぞ」そう言われて奥の席へ。
テラス席では、ブロンド髪の5歳くらいの女の子が、パパ・ママ・妹に話しかけて笑顔がはじけています。その隣では、カップルが楽しそうに談笑。
私の目の前は、待ち合わせの女性ふたり。となりは私と同じおひとり様女性。
みんな、思い思いにこの空間を楽しんでいます。
店内一角の本棚にはたくさんの本が置かれ、飾り棚にも写真集がキレイに並べられています。
それを見て「本を持ってくれば良かった」と心の中でつぶやいていました。
そんな時、新たなおひとり様女性が来店。
彼女は注文を終えると、文庫本を取りだし読書を始めたのです。どうやらここは、本を読みたくなる空間のようです。
コーヒー、スイーツとは違う看板メニューが気になって
「本が読みたい」そんな風に思いながら、コーヒーとスィーツを注文すると「少しお時間掛かりますが大丈夫ですか?」と、ちょっと恥ずかしがり屋な感じの店員さん。
「時間はたっぷりありますので」
そう伝えると、にっこりと微笑んでから厨房に消えて行きました。
まず注文したのは「ブレンドコーヒー」。
メニューには「1月のお豆は鎌倉・ヴィヴモン ディモンシュより」とあります。
月替わりで豆が変わるんだ。
メニューの裏表紙を見ると、鎌倉のお店の他にも島根・徳島にある自家焙煎のお店が紹介されていて、マスターお気に入りの焙煎コーヒーを月替わりでいただけるのだとわかります。
コーヒーにこだわったお店のスイーツに選んだのは「シフォン」。
ふわふわの生地が好きで、シフォンがメニューにあれば、ついつい頼んでしまいます。
注文を終え、手持ち無沙汰になって手帳を広げる私の目の前を、カレーが次々に運ばれていきます。
このお店のフードメニューは「pork curry」と「fish curry」のふたつに、それらの「mini curry」のみ。
「pork curry」は、豚の角煮をつくってから煮込み、「fish curry」は旬の魚に粉を振って焼いてから煮込むと書いてあります。
「おいしそう…」
味を想像しながらメニューに見入っているところに、「お待たせしました」の声。
気づくと目の前に「ブレンドコーヒーです」と、カップが置かれています。
ブレンドコーヒーとの相性抜群のシフォンケーキには……
カップからのぼる湯気に頬を緩ませると、「こちらシフォンになります」。
並んで皿が置かれました。
皿の中を見て、思わず心が躍ります。
だって、バニラアイスがたっぷりと添えられているんですもの!
甘いものの中で、ダントツにバニラアイスが好き。
アイスから食べたい気持ちをおさえつつ、まずはブレンドコーヒーを一口。
「ん!ブラックなのに苦みも酸味も強くなくて、とても飲みやすい」
コーヒーが好きとは言え、ついつい砂糖とミルクを足してしまう私。でもこのコーヒーは、むしろ入れない方がいい。
「シフォンは?」アイスだけでいただきたい気持ちを堪えて、生地と共に。
「シナモンの風味とバニラアイスの組み合わせが、絶妙にマッチしているし、そのあとにいただくコーヒーが、さらに引き立つ!」
まさに、大人の贅沢スイーツです。
「アイスがとけないうちに」と言うのは建前、本当は手が止まらず、あっという間に完食していました。
なんて豊かな時間なのでしょう。
本の読みたくなる空間が描かれていた絵
気づくと、空の色が夕暮れの近いことを知らせています。
カップにはコーヒーがほんの少し。
「300円でコーヒーをお代わりして、この余韻を味わおう」一瞬そう思いましたが、段々と本屋に行きたい気持ちが強くなってきました。
私は残りのコーヒーを味わいながらゆっくり飲み干し、お店を出ることに。
扉を開けようとした時、壁の絵に気づきました。
海辺でコーヒー片手に、夕日を眺める魚。その脇には開いた本が置いてあります。
「ああやっぱりこのお店は、本が読みたくなるところなんだ」。
お店を出た私は、夕日が沈む海岸を背に、本屋に向かうのでした。
Umibe cafe
所在地:神奈川県逗子市新宿2-2-16
電話:046 845 9209
アクセス:JR横須賀線逗子駅、京急線逗子・葉山駅から徒歩約10分
開店時間:11:00~17:00
定休日:火、水曜日