葉山には、天皇皇后両陛下や皇族のみなさまが静養のためにいらっしゃる葉山御用邸があります。葉山御用邸は一般公開されていないので、私たちはもちろん、足を踏み入れることはできません。
しかし、御用邸の一部として使われていた場所に、誰でも行くことができるのはご存知でしょうか?
その場所とは、葉山御用邸に隣接している「葉山しおさい公園」と「県立葉山公園」です。
実は、葉山御用邸付属邸だった場所が、葉山しおさい公園になり、葉山南御用邸だった場所の一部が、県立葉山公園となっているのです。
今回はそのうちのひとつ、「葉山しおさい公園」をご紹介します。美しい日本庭園が見どころで、かながわの公園50選にも選ばれています。大人の静かなお散歩にもおすすめですよ。私も久しぶりにひとりで訪ね、じっくりゆっくりと静かな時間を過ごし、とても穏やかな気持ちになることができました。
ここが昭和発祥の地
葉山しおさい公園は、葉山御用邸付属邸だった場所とご紹介しましたが、その証を公園内のいたるところで見ることができます。
そのうちのひとつがこちらです。
この場所は大正天皇が崩御され、昭和天皇が皇位継承された場所であるという説明と、石碑がありました。昭和発祥の地とも言えますね。
かながわの公園50選に選ばれた、日本庭園
葉山しおさい公園と言えば、三ヶ岡山を借景とした、奥行きのある日本庭園を楽しむことができます。
春は桜やツツジ、秋は紅葉、冬のこの時期は梅や椿など、それぞれ季節の楽しみがあります。この日も、熱心に紅梅の写真を撮る人の姿がありました。
池をぐるりと回るように庭園を散策していると、水の音が聞こえてきます。
「噴井(ふけい)の滝」という小さな滝があり、井戸水を循環させた池と繋がっています。約3mある滝は、公園内とはいえしぶきが上がるほどの迫力があり、ザーという音が耳に心地よかったです。
眼下に広がる一色海岸
日本庭園奥の黒松林が広がっています。海風から公園を守るため、黒松が植えられているのです。海街ならではですね。
黒松林を抜けると、一色海岸を眺めることもできますが、海岸に降りることはできないので注意しましょう。
休憩どころの潮見亭
葉山しおさい公園は小さな公園なのかなと思いきや、意外と見応えがあり、日本庭園を一周したころ、少し休憩がしたくなりました。
そんなときは、公園内にある「潮見亭」に立ち寄りましょう。この場所は、平成5年の現・天皇皇后両陛下のご成婚記念に建てられた茶室なのです。
ここは喫茶や食堂ではなく、テーブルと椅子が並ぶだけの休憩どころです。それでも、持参した水筒のお茶を飲むのには十分です。中には、お茶が無料でいただける給茶機と紙コップもありました。子連れのときにも、ほっと一息つけて安心ですね。
「潮見亭」の名前の由来は、この茶室の窓から潮騒の音が聞こえ、潮の満ち引きがわかることから名付けられたそうですよ。
さらに、茶室の奥へ出ると「六角堂」へと続き、六角形の美しい建造物を楽しむことができます。
惜しまれつつ閉店した一景庵
もうひとつの休憩所として、お抹茶などをいただける茶室の「一景庵」がありましたが、2023年9月にその営業は終了してしまいました。しかし、事前の予約で、茶室のレンタルができるそうです。この日は偶然にも、私の友達がお茶のお稽古で奥の茶室を利用していました。千利休が好んだ裏千家の又隠(ゆういん)という茶室を模したこの場所で、お茶のお稽古ができるなんて、ステキだなぁと思いました。
※2024年1月現在、一景庵での喫茶の営業はおこなっていません。
葉山しおさい博物館も併設
葉山しおさい公園は、日本庭園だけではありません。園内に、「葉山しおさい博物館」を併設していて、無料で入館することができます。(葉山しおさい公園の入園料は必要)
葉山しおさい博物館の建物は、御用邸付属邸の御車寄せだったものを移築して造られています。葉山御用邸の様子を垣間見ることができますね。
葉山の海の歴史と、生物について学べる博物館
葉山しおさい博物館には、常設展示として葉山周辺の海の魚類、貝類、海藻類が展示されています。標本もたくさん展示されていて、予想以上に見応えがありました。
いつも散歩に行く葉山の海や磯で見られる生き物のことも知ることができ、とても興味深かったです。
海の生き物が好きな子どもや、小学生くらいの子どもと一緒に見に来るのもおもしろそうだなと思いました。
さらに見所として、長年、海洋生物の研究をされていた昭和天皇のコレクションや、深海生物についての展示もされています。私にも馴染みのある葉山の磯で、長靴姿の昭和天皇がお歩きになっている写真もあり、あの場所に昭和天皇もいらっしゃったんだなぁと、うれしい気持ちになりました。
葉山の歴史に触れ、心穏やかな時間
葉山しおさい公園では、葉山の歴史や文化が見えてくる静かな時間を過ごすことができました。園内の葉山しおさい博物館では、生活の一部とも言える葉山の海について学ぶことができ、改めて海への散歩が楽しみになりました。
葉山しおさい公園は想像していたより広く、たくさん歩きますが、公園内のあちらこちらにベンチが設置されているので、休み休み散策することができます。私もゆっくり1時間以上も滞在していたようです。
外の車の音はほとんど聞こえず、鳥の声と、波の音、滝の音、足元の砂利の音だけが聞こえてきます。四季それぞれに美しい景色を見せてくれる日本庭園の穏やかな時間を、みなさんもぜひお楽しみください。
葉山しおさい公園
住所:神奈川県三浦郡葉山町一色2123-1
アクセス:JR横須賀線「逗子駅」「逗子・葉山駅」からバス乗車、「一色海岸」下車すぐ
TEL:046-876-1140
営業時間:8:30-17:00(入園は16:30まで)
休園日:月曜日・祝日の翌日・年末年始(12月28日-1月3日)
入園料:・高校生以上
一般:300円
20人以上の団体:250円
・小・中学生
一般:150円
20人以上の団体:100円
※同日に県立近代美術館葉山及び山口蓬春記念館を利用した場合、
半券の提示で50円の割引があります。
・次の方は入園料が無料になります
未就学児
葉山町内在住の70歳以上の方
身体障害者手帳及び療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を提示された方および介助者1名